シン・仮面ライダー【ネタバレあり感想】★7
仮面ライダーは平成ライダー(クウガ以降)作品は割と抑えているのですが,初代をはじめとした昭和ライダーは全く抑えていません…
というわけで予習しようかとも思ったものの,なんだかんだ仕事が忙しいことを理由に一話も予習しないでいるうちに公開日を迎えてしまったし,友達と約束してしまったしで結局初代ノー予習で観に行ってまいりました!
あらすじ
本郷猛(池松壮亮)と緑川ルリ子(浜辺美波)は,SHOCKERを脱走し,戦闘員に追われて身を隠す。
しかし,身を隠したセーフハウスにクモオーグが現れ,ルリ子の父弘が殺されてしまう。
本郷はルリ子を攫ったクモオーグを追跡して倒し,仮面ライダーを名乗ってSHOCKERとの戦いに身を投じていく。
基本情報
監督・脚本:庵野秀明
製作国:日本
公開:2023年
上映時間:121分
こんなひとにおすすめ
・ダークな雰囲気のヒーローものが好き!
・大人の仮面ライダーが観たい!
感想
全体的にダーク
いやぁ,中々に暗い作品でした。
平成ライダーでいうとシリアスなシーンしかないクウガ。コメディシーンが全くない。仮面ライダーの映画っていうくくりで観ても相当珍しいんじゃないかこれ。
これまでのシンユニバース作品とはだいぶ雰囲気が違う印象を受けました。
登場人物はバンバン死ぬ,というか最後に生き残ってるの特異点っぽい2人以外だと2号の一文字隼人しかいないし。仮面ライダー龍騎並みの退場度合い。
作品の雰囲気も暗ければ画面も暗いシーンが多くて,画面の雰囲気的にはちょっと明るいバットマンって感じです。
どことなく555っぽさもあります。暗いところとか、SHOCKER構成員が死ぬと泡になるところとか、ファイズでオルフェノクが灰になるのにそっくりでした。
今作は初代の漫画要素を多く入れているようなので,漫画はどんな雰囲気なのか読んでみたくはなりました。
キャスト見ないで行った方が楽しめるかも
今作はトレーラーで出てくるのが池松壮亮と浜辺美波くらいで,登場人物ほとんどわからない状態だったんですが,事前に知っとかなくて正解だったと思います。
公式ホームページ観ると基本情報のところに載せた方々は載っていますが,その他のキャストはほとんど載っていませんが,知らずに見たほうがエンドロールの時に「あ,あのキャラあの人だったんだ!」ってのが起きて楽しいと思います。声優と怪人は見てる時は割と誰だかわからなかったので。
竹野内豊はシンユニバースを繋ぐ特異点みたいな存在なんですかね。立花っていう名前のキャラクターは初代にも出てくるらしいですが、今作の立花の立ち位置はこれまでのシンユニバース作品の竹野内豊の立ち位置とだいたい同じ。
一緒に出てくる斎藤工演じる滝も原作にいるキャラクターみたいですが、こちらもシンウルトラマンの時のような雰囲気。
竹野内豊と斎藤工の登場はサプライズだったらしいです。シンウルトラマンの流れを見てるとそんなにサプライズ感はなかったですが、事前に聞いてなくてよかったな、とは思いました。
最近のライダー見慣れてると戦闘シーンはいまいちかも
仮面ライダーなのに戦闘いまいちとはなんぞやって感じですが,CG使わなくてもいいのでは?と思える場面でバンバンCG使ってたのはあんまり印象良くなかったです。
ウルトラマンの戦闘はCGじゃなきゃできないことがあったけど,仮面ライダーはバッタオーグ感を出そうとしすぎて必要以上にぴょんぴょんしていた気がします。
ある程度戦ったら戦闘の優劣に関わらず必殺技をぶっぱなして勝ってしまうあたりは昭和~平成初期のライダーの雰囲気を感じて嫌いではなかったですが,最近のライダーしか見ていないと違和感を感じるかもなぁとは思いました。
僕を育ててくれたテンダー・バー【ネタバレあり感想】★9
今回の作品はアマプラ限定配信映画。
主演はバットマンで有名なベン・アフレックとレディ・プレイヤー・ワンのタイ・シェリダン。
ブログを始めた時にこの映画はレビューしたいな、と考えていたので、今回記事にしました。記事にするにあたり、もう一度この映画を見直してみたのですが、やっぱり面白い!
青春映画のジャンルに含まれるんだろうけど、内容としてはクリント・イーストウッドが撮ってるような「男とは」みたいな作品です。
イーストウッドが絡んでるのかと思ったら監督はジョージ・クルーニーでした笑
あらすじ
モーリンガー(タイ・シェリダン)はラジオパーソナリティの父親が失踪し、母親と暮らしていたが,養育費の支払いを受けられず,家賃滞納で実家に帰ってくる羽目になる。
実家の一軒家には叔父のチャーリー(ベン・アフレック)をはじめとした親族が所狭しと住んでいて,モーリンガーは賑やかな日々を送りつつ,「Harvard or Yale!」とか言ってなんとしてもわが子を名門大学に入れようとする母の下厳しい教育を受ける。
そんな日々を過ごす中,モーリンガーはチャーリーの経営するバーに通い,父親代わりのチャーリーから,男とは何たるかを学んで成長していく。
基本情報
監督:ジョージ・クルーニー
脚本:ウィリアム・モナハン
出演:ベン・アフレック,タイ・シェリダン,リリー・ホープ,クリストファー・ロイド
製作国:アメリカ合衆国
公開:2022年
上映時間:104分
こんな人におすすめ
・男とは,みたいな映画が好きな人
・バーのシーンが好きな人
・安心して観られるけど面白い映画が観たい人
感想(よかった点)
男とは,を次の世代へ継承する心温まる物語
「男とは」っていうのはクリント・イーストウッド監督のライフワークだと勝手に思っているんですが,今作は父代わりの叔父から,そんな「男とは何たるか」を学びながら成長していく主人公モーリンガーの話です。
こう書くといかにもフィクションっぽいんですが,今作はJ・R・モーリンガーの自伝が原作の作品なので,全部が全部フィクションというわけではなさそうです。
モーリンガーさんは実際に今作のモーリンガーのような幼少期を過ごし,青春を過ごし,バーでの日々を過ごして作家になったのでしょうか,ちょっと気になります。
モーリンガーが幼少期に母の実家に来てから大人になるまでを描いているので,時間の流れとともに成長していく主人公がみれるのは映画というよりドラマっぽいなあと思いました。
ツッコミどころ満載なチャーリー叔父さん
モーリンガー視点では「男の中の男」みたいな描かれ方をしているチャーリーですが,実際のところチャーリーがそれほどまでにはできた男ではない,というのが今作の面白さ。
まあベン・アフレックだからかっこいいんだけれども。
男にとって大切なこととは仕事と車を持って自立していることだ。そうすれば女は寄ってくる。みたいなことを言っているけど,チャーリーはずっと実家暮らし。いわゆるこどおじというやつです。
季節が流れてチャーリーの兄弟家族やモーリンガーが一度家を離れるときも実家。チャーリーが一人暮らしをしていたことを匂わせる描写はありません。
にもかかわらず男の自立を語る,モーリンガーの母親にもしれっと突っ込まれていますがそこがいい。
そしてチャーリーの語る男の流儀も,チャーリー自身が自立しているのかそもそも疑わしいという点を除いたとしても疑問符がつくものが多くてちょっとクスッとしちゃいます。
男ならジンを飲め,安物のスコッチはダメだ。とかもうよくわかりません。チャーリーとモーリンガーの父の酒の好みがゴリゴリに反映された教訓でチャーリーの悪意を感じます(笑)
それでもモーリンガーの父親代わりの役割を果たすチャーリー叔父さん
とまあそんな感じでイーストウッド的な男像からは程遠いチャーリー叔父さんですが,誰に頼まれたわけでもないのに父親代わりの役割を果たしていくのがかっこいい。
モーリンガーに文才があり,また作家に興味があることに母より先にいち早く気づき,作家になれるように手ほどきをしたり,経営するバーに入り浸らせてお酒の飲み方を教えたりとなかなかナイスな一面も。
バーで大人の仲間入りを果たすシーンっていいよね
ニューヨーク州の法律で成人認定された日にチャーリーのバーで酒を飲むモーリンガーと友人たち。成人迎えて初の酒がバーって最高すぎますね。
そこでチャーリーは,好きな酒を作ってやるが今日頼んだのをこれからも出すからな,ちなみに俺のオススメはジン特にマティーニだ,みたいなことをいいます。
そこでモーリンガーたちが頼むのがマティーニとヴェスパー。明言しているわけではありませんが,酔いが回っているシーンで持っているのがマティーニとヴェスパーです。
どちらも他の映画だと割と大人の中の大人が飲んでるカクテルですが,それをこれから大人になっていく彼らが飲むっていうところがいいです。
感想(いまいちだった点)
めちゃくちゃ盛り上がるシーンがあるわけではない
今作,基本的に全般通して面白いんですけど,唯一イマイチな点が,盛り上がりどころがないところ。
それもまた人生,という感じなのかもしれないし,そう考えるとすごいしっくりくるんだけど,にしても映画の顔というかなんというかそういうしーんあってもよかったのかなぁとは思った。
話自体は普通に面白いし,ドキドキするようなシーンもないから安心して観れるので,心温まる男の承継や青春映画が観たい人は是非観てみるといいと思います!
ラ・ラ・ランド【ネタバレあり感想】★7
デイミアン・チャゼル監督の最新作バビロンがめちゃくちゃ面白かったので,チャゼル監督の作品の中で今まで観てこなかったラ・ラ・ランドも履修しておこうかなぁと思って今更ながらアマプラで観てみました。
いままで観なかった理由は,ミュージカル映画があまり好きではないっていうのと,エマ・ストーンが好きじゃないってところです。
ミュージカル映画はレ・ミゼラブルが全然楽しめなくて以来避けていて,あれ以来一作も劇場で観ていません。
そろそろ毛嫌いせずにまた観に行ってみようかな。
エマ・ストーンが好きじゃないのは,顔が好きになれないっていうどうしようもない理由です。
そんな「チャゼル監督の作品だから観ました,主演のエマ・ストーンは苦手です。」みたいな人の感想なので,軽い気持ちで目を通してもらえればと思います(笑)
あらすじ
冬の朝、ハリウッドを目指す車で大渋滞になっている高速道路上で、ハリウッドスターを夢見る女優の卵ミア(エマ・ストーン)と、廃れていく古き良きジャズを憂い、ジャズを奏でる自分の店を持つことを夢見るものの、現状明日の仕事すらままならないジャズピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)が最悪の形で出会う。
2人はその後も季節の流れと共に幾度となく出会い、じきに惹かれあっていくが、2人の夢への姿勢,恋心も月日と共に移り変わっていき…
基本情報
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング,エマ・ストーン,ジョン・レジェンド,J・K・シモンズ
制作国:アメリカ合衆国
日本公開:2017年
上映時間:128分
こんな人におすすめ
・オープニングでワクワクする映画が好き!
・夢を追いかける物語が好き!
・切ないラブストーリーが好き!
感想(良かった点)
思ってたより面白かった!レ・ミゼラブルの影響でミュージカル映画ってほとんど全部歌ってんのかと思っていたけど,そうじゃないのね。
これくらい時々歌って踊るくらいなら全然楽しく観れました。
この映画面白いでしょきっと!って思わせてくれるオープニング
今作冒頭の1曲目「Another day of Sun」のシーンは作中で一番お気に入りのシーンでした。
このシーンに関しては岡田斗司夫さんがめちゃくちゃ詳細な解説をYoutubeでされていたので,映画を観て気になった方は是非見てみてください。
自分は,違う曲を聴いていたドライバーたちが一つになっていく=みんな実は同じところを目指している,ハリウッド行きの車線(踊る側)は止まるほど渋滞しているのに他の車線は流れている=踊っている人達は銀幕を目指しているけどたどり着けずに足踏みしている,くらいしか気づけなかったけど,岡田さんは歌詞からなにからいろんなことを考察していて非常に面白いですよ。
実際世の中でありえそうなそこそこリアルなエンディング
今作は,ミアとセブが互いに夢を目指したり諦めかけたりしながら進んでいくのですが,お互いのおかげで夢をあきらめないことを決めたのに,お互いが夢を叶えたその時に隣にいるのは別の相手になっています。
なんかちょっとリアルだと思いません?人生を変えた相手と共に人生を歩むとは限らないっての。
完全ハッピーエンドを求める人達からすると,今作のエンディングはハッピーエンド度は言い切れないという不満があるらしいですが,夢を追ってハリウッドに来て夢を叶えている以上,十分ハッピーエンドだと思いますし,「いつまでも幸せに暮らしましたとさ,めでたしめでたし」ではないハッピーエンドの形って感じがして僕は好きです。
セブの絶妙なガラの悪さがいい味してる
ジャズバーの開店を夢見る主人公セブ,まあまあガラ悪いです(笑)
看板叩いて壊してみたり,ミアの家にミアを呼びに来た時に玄関でチャイム鳴らさずクラクションで到着を知らせたり,クリスマスに雇い主から指示されたクリスマスソングを弾かないでみたりとなかなかやんちゃです。
時代の流れに逆らって古き良きジャズをやりたい!っていう斜に構えたキャラクターの性格にマッチしてます。
家の前来たらクラクション鳴らすやつは実は自分の友達にもいたことがあるので,あの到着の合図グローバルなんだ!ってちょっとだけ親近感沸きました。
観ててダメージを負わないチャゼル映画
デイミアン・チャゼル監督の映画って,面白いけど見るときちょっと心にダメージ負いません?セッションなんか特に顕著ですけど。
なので,僕はチャゼル監督の作品は大好きなのですが,あまり短いスパンで繰り返し観れません。
劇場公開で観た作品も,もう一度劇場で観たいと思いつつ,心を決めて劇場に行けるようになるまでに劇場公開が終わっていて,後で配信でもう一度観る,というパターンが定番です(笑)
でも,この作品はそんなことはなくて,気に入っていたら何度でも観れそうだなって感じがしました。
感想(いまいちだった点)
特になし。
じゃあなぜ★7なんだという話ですが,やっぱりエマ・ストーンがあまり好きではない。それと,他のチャゼル映画よりも人の辛い部分の描き方が弱くて,魂を揺さぶられる度合いが小さかったっていうのがあります。
キャラクターだけでなく観客の心までも折りに来る辛さの表現が自分は好きなんだろうなぁ,と思います。
チャゼル監督の作品の中では万人受けしそうな感じで,わりかし気楽に観れますし,誰とみても楽しめるし,音楽はいいしで,観たことがある人が多くて話題にもできるしで,一度観てみる価値は十分あるかと思います!
月世界旅行【ネタバレあり感想】
バビロン熱が冷めやらぬのでこの機に観てみようかな,と思い立ってみることにした映画史に残る名作。
この映画を観たことがなくても,月の顔面に宇宙船がぶっ刺さるシーンだけは観たことがあるって人は多いんじゃなかろうか。かくいう私もそのうちの一人でした(笑)
監督は「ヒューゴの不思議な発明」でも映画界への貢献が称えられているジョルジュ・メリエス。映画創成期を支えた立役者の一人です。
14分の映画は当時としてはめちゃくちゃ長い映画だったらしいです。14分で長編映画って今では想像もつかないですね。
昔の映画ってどこで観れるのかなと思っていたのですが,なんとアマプラで観れます。しかも無料。
アマプラって新しめの映画は無料で,映画オタクが好んで観るような古い映画は有料であることが多いんだけれど,この映画は無料です。多分版権切れてるからだと思う。
こういう映画も取り揃えてるというところで,アマプラの凄さを改めて実感しました。
今回は評価の★はつけないことにします。100年以上前の映画を今の視聴者基準で評価するのは違うと思うし,何より何点つけるかめちゃくちゃ悩んだからです(笑)
あらすじ
天文学会の会議にてバルベンフィリ教授(ジョルジュ・メリエス)は月への調査旅行を提案する。これに賛同した5人の天文学者と共に教授はロケットで月へ向かう。
無事に月に到着し,月を探検していると,月の住人セレナイトが襲ってきて,一同はパニックになるが,勇敢な一人が傘?でセレナイトを叩くと,セレナイトは爆発し,叩くか叩きつけるかすると倒せることに気づく。
探検隊はセレナイト達に襲われ,捉えられて王の前に連れて行かれるが,一人が好きを見て縄を逃れ,王を叩きつけて殺す。
王を殺されたセレナイト達は混乱し,探検隊を追跡してくるが,探検隊はロケットに乗って月を脱出し,英雄として無事帰還する。
基本情報
監督・脚本:ジョルジュ・メリエス
出演:ジョルジュ・メリエス,ブルエット・ベルノン,フランソワ・ラルマン
製作国:フランス
公開年:1902年
上映時間:14分
こんな人におすすめ
・映画創成期の作品が観てみたい人
・サイレント映画に興味がある人
・月にロケットぶっ刺さるシーンだけ知ってる人
感想
サイレント映画らしさを感じる作品
14分がちょうどいい感じの勢いのある映画。
サイレント映画なので声はありません。
当時は映像に合わせて収録した音を再生することが困難だったらしく,サイレント映画の時代の当初は本当に無音,途中から映像に合わせてオーケストラが音をその場で当てるサウンド版がでてきたらしいです。音をつけられなければその場でつければいいっていう努力が感じられていいですね。
セレナイトが叩けば倒せる異星人っていうのも,まさにサイレント映画だからだと思うんですよね。絞めたり刺したりするようなアクションって音ありかつ今の解像度で映画が見られるからだから映えるのであって,映像粗くて音もないとなると,投げて倒すってのは非常にわかりやすい。
台詞がない分身振り手振りで状況を表現しなくちゃいけない関係上,登場人物の動きは基本的に大袈裟です。
字幕もないから動きの雰囲気で状況を理解する必要があるので,なんだか本を読んでいる時の逆パターンな気分になります。本は文章から情景をイメージしますけど,サイレント映画は情景から台詞をイメージする感じです。
月世界にも時代を感じる
映画が公開されたのは1902年と宇宙開発競争が始まる50年以上も前だったので,月への行き帰りや月世界の表現にはかなりファンタジー入ってて時代を感じます。
宇宙に行くのに宇宙服は着てないし,発射はミサイルみたいなノリで発射されるし,宇宙空間生身で飛んで帰ってくる隊員はいるわでまぁまぁな自由っぷりです。
今だったら絶対撮れない感じでなんかいいですよね。
サクッと観れて歴史も感じられるので,映画を観て映画史にちょっと興味がある人なんかは是非観てみるといいんじゃないかと思います!
【鬼滅の刃】鬼狩りは法律的には殺人か?
鬼滅の刃、刀鍛冶の里編の映画が公開中です。
主人公の竈門炭治郎は,鬼殺隊と呼ばれる鬼狩り目的で結成された組織で戦う鬼狩りで,作中でもバッタバッタと鬼の首を切りまくっている訳ですが、相手が鬼だからって理由で無闇やたらに殺していいもんだろうか。
鬼狩りという名の程のいい殺人では?
ということで、今回のテーマは「鬼を狩るのは法的には殺人にはならないのか」というお話です。
フィクションを生真面目に法的解釈するコラムなので,気楽な気持ちで読んでください笑
殺人罪ってどういう罪なの?
刑法には,殺人について以下の通り定められています。
刑法199条
人を殺した者は,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
はい。実にシンプルですね。非常にわかりやすい。
鬼は法的に人間でないと言えるのか
わかりやすいんですが,今回のテーマを考えるにあたっては「鬼って法律的には人間なの?」というところが問題になってきます。
鬼が法的にも人でないなら切って全く問題ないですからね。
ここで、作中に出てくる鬼のことを確認すると、鬼は自然発生的にどこかから湧いてきているわけではなくて,鬼舞辻無惨の血を注ぎ込まれた元人間です。
じゃあ人間じゃないじゃん,切ってOK!となりそうなんですが,そうもいかないのが法律の面倒くさい難しいところです。
あの世界だと鬼は当然のようにもはや人間じゃなくて人間の敵,っていう扱いをされてますけど,では人間は人間として生まれた後,どの時点で人間として死亡扱いになるのかと。
この点については,今の日本では三徴候説という説がとられていて,これが通説となっています。
どういう説かというと,心臓の死をもって人の死とする,という考え方で,心臓の死の判断に当たっては,自発呼吸の停止,脈の停止,瞳孔反射機能等の停止の3点をみる,というものです。
これを鬼に関して見てみると,まず鬼に心臓があるのかというところですが,これはあるようですね。鬼舞辻無惨は作中で心臓が七つ,脳が五つあるという描写がありますので,鬼も人間と同じく心臓を持っているようです。
そして鬼は,人間が死んで鬼になる,のではなく,生きている人間が無惨の血を与えられて鬼の能力を得る,という感じですよね。
煉獄さんも猗窩座に鬼にならないかと勧誘されるときに,「死んでしまうぞ杏寿郎!鬼になれ!鬼になると言え!」って言われてますし、人間から鬼になる時にも別に死ぬわけではないようです。
となると、人間から鬼になるまでのステップの中で、心臓が死ぬ場面はありませんね。
黒死牟さんが鬼になっても鬼殺隊だった時と同じように呼吸が使えてるわけなので、鬼になったら鬼の心臓になる、とかいう感じでもない気がしますし。
結論
というわけで,結論としては鬼は鬼と呼ばれているけれども、法律的には人間の扱いなので、鬼狩りは殺人罪の構成要件に該当してしまう,ということになりそうです。
まぁそうは言っても,鬼は当然のように食料として人間を殺しにきてますから,今の法制度に当てはめたとしても,鬼の被害が出始めたらすぐに鬼狩りが合法になるような制度ができたり,正当防衛で違法性阻却,となって鬼狩りは許されるんじゃないかと思います。
バビロン Dolby Atmos【ネタバレあり感想】★9
ブラピ×マーゴットロビーってだけで,両者のファンとして昨年情報公開された時から公開を心待ちにしていた作品。
シリーズものじゃない作品を待ってる時のドキドキ感ってなんかいいですよね。
あらすじ
サイレント映画の巨匠ジャック(ブラッド・ピット)が開いた豪華な乱痴気パーティーで,新進気鋭の女優ネリー(マーゴット・ロビー)と,ハリウッドに夢を見て業界に飛び込んできた青年マニー(ディエゴ・カルバ)は運命の出会いをする。
時代はサイレント映画からトーキー映画の時代へと移り変わっていくが,3人の運命も周りの人をも巻き込んで徐々に移り変わっていく…
1920年代のハリウッド黄金時代を舞台にしたクレイジーな人間ドラマ。
基本情報
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:ブラット・ピット,マーゴット・ロビー,ディエゴ・カルバ,トビー・マグワイア
制作国:アメリカ合衆国
日本公開:2023年
上映時間:185分
こんな人におすすめ
・マーゴット・ロビーが好き!
・デイミアン・チャゼル監督の描く人の苦悩・辛さが好き!
・ハリウッド黄金期の世界観が好き!
・熱いジャズが好き!
~以下ネタバレありの感想です。~
感想(良かった点)
面白かった!!上映時間185分と聞いた時にはこのストーリーでそんなに時間あったら飽きないかが心配だったのですが,そんな心配は杞憂でした。
ただ,なんで面白かったのかと聞かれるとこれが上手く説明できない(笑)
でも,なんかよくわからないけど面白かった,とかそういうわけでもないんだよなぁ。
時間を感じさせないほどの熱量で,夢を見ているのかテキーラのショット飲みすぎてふわふわしているのかよくわからないような感覚。
ハリウッドに夢を見た者たちの栄光と破滅,欲望と熱狂みたいな綺麗ではないけれどもドロドロしているわけでもないものを3時間たっぷり浴びせられるから,終わった後はなんだかすごいものを観たなぁという感じ。
同じチャゼル監督の「セッション」を見たときの感じに近いものがあるかもしれない。
序盤から終盤までマーゴット・ロビーがノンストップで狂喜乱舞し続ける3時間
冒頭のパーティーシーン,会場で堂々と脱いで乱痴気騒ぎは当たり前,個室で女優とドラッグキメて変態プレイをしてる偉い人はいるし,挙句ドラッグの過剰摂取で女優は死ぬわのまぁあれやこれやの大騒ぎの大宴会を見せつけられていきなり映画の勢いに引き込まれる。
そこに颯爽と現れるのは,セクシーなドレスに身を包んだネリー。
登場早々いきなり車を彫像にぶつけて彫像ともどもスクラップにしたかと思えば,詰め寄ってきた警備担当(当然ネリーより偉い)に「彫像が動いてぶつかってきた」とかいうおよそ通るとは思えない小学生以下の言い訳を当然のようにぶちかます。
この時点では女優ですらなく,そもそもパーティーに招待すらされていないのに,そんなことはどこ吹く風でマニーの助けも得てパーティー会場に入っていき,持ち前の魅力とドラッグの力でフロアの中心になっていく姿は圧巻の一言。
フロアのダンスシーンでのマーゴット・ロビーの色気はものすごい,ヤバい。映画のトーンを明確に打ち出した名シーンだった。元々色気ムンムンな女優さんだけど,パーティー会場の空気感も相まってものすごいことになっています。
前から好きな女優さんだったけど,今作を見てもっと好きになったし,これからも彼女のファンでいたいと改めて思いました。
怒涛の場面転換
パーティーシーンで黄金のハリウッドを見せつけたかと思えば,パーティー翌朝のシーンで急にリアルを見せてくるのがまたたまらん。
ジャックは大スターなので,パーティー会場に劣らぬ大豪邸に帰っていくわけだけど,その他の面々は昨晩の華やかな世界から一転,イスをベッド代わりにして寝るような部屋だったり,パーティー会場並みにとっ散らかったベッドのみの部屋,プライベートもなにもないような部屋だったりと様々で,登場人物達を一瞬にして現実に引き戻す。
翌朝のそれぞれの生活を描いていることで,その後の撮影シーンがまた映える。
この場面ではあっちゃこっちゃで防音もせずに色々な場面を平然と撮影しているのは,サイレント映画ならではという感じ。
トーキー映画だと周りの音が入るからおよそ無理な芸当。後半の防音ばっちりの中で撮影されてるトーキー映画の撮影現場との対比が面白い。
その後もトーキー映画の流れに対応しようとするも流れに乗り切れないジャックの苦悩,マニーやシドニーの出世,ネリーの栄光と破滅といった人間ドラマを怒涛の勢いで繰り出してくるもんだからもうたまらん。
ハリウッド黄金時代の狂気を3時間ノンストップで浴びせられる。
観客含めた登場人物全員の物語
この映画,ブラピとマーゴットとディエゴの3主人公にスポットライトを当てた物語かと思いきやそうではない。
確かに3人の出番は多いけど,誰が主人公かと言われるとポスターに出てくる全員が主人公。
最初は単なる1演奏家で映画界とは縁もゆかりもなかったシドニー(ジョヴァン・アデポ)や,字幕家なのかシンガーなのかよくわからない役割で、ハリウッドでの自分の立ち位置を模索するレディー・フェイ(リー・ジュン・リー)にもスポットライトがあたり,彼彼女らの人生もが描かれるところで,この映画はある人の物語なんじゃなくて,サイレント映画全盛期からトーキー映画の時代へと移行する激動の時代をハリウッドで生き抜こうとする一人一人の物語になっている。
一方で、彼らの人生を描きつつ、時代が変わろうとも劇場に足を運んで映画を見続ける観客私達の物語でもあると感じさせられる作りになっていて、自分も映画という多いなる概念の一部のような気がしてくる。
ボーっとしていると観客が置いていかれそうになるほどの勢い
1926年から30年代にかけてのハリウッド映画の転換期を舞台にしていて,サイレント映画からトーキー映画への転換,というのが重要なテーマなのだけれど,ここの説明は割と雑い。
ジャックが輝けなくなってくるのには世界恐慌も絡んでるはずなんだけど、このくだりはない。
並の映画ならそこのところの説明がなくてもなんとかなるんだろうけど,この作品は勢いがものすごいから,ボケっと観てると作中の時代の流れに観てる側がおいていかれそうになる。
台詞が下手でジャックが映画館で笑いものにされてるシーンとか,なんで笑われてるのかわからない人とかいるんじゃないだろうか。
ここはこの作品のいい面でも悪い面でもあったかな
感想(いまいちだった点)
とはいえ,観る人を選ぶ映画かもしれない
個人的にはなかなか面白い映画だったのだけれど,万人にお勧めできるかというとそうでもない。というか無理な人は無理だと思う。
実際,自分が観に行った回も,途中でトイレに抜けたのかと思いきや帰ってこなかった方が何人かいた。
まずこの映画,本当に雑に一言で説明するなら「映画業界版ウルフ・オブ・ウォールストリート」って感じなので,とにかく汚い。SNSでは汚いラ・ラ・ランドなんて意見もありました。
糞尿!ドラッグまみれ!ゲロまみれ!撮影現場で人は死ぬ!おっぱい!って感じの狂気と野望のエンドレスワルツに加えてチャゼル監督の思想モリモリなので,無理な人は無理なんだろうなぁっていうのはわかる。
この映画本当にR15でいいのか?
「セッション」でもそうだったけど,この監督,野望と狂気が入り混じった感じの表現が画面を超えてくるから,確かに席から離れたくなる気持ちはわからんでもない。
映画館で映画を観ることに慣れている人のための作品かもしれません。
個人的には,ジャックがこれから自殺することを暗に知らされたうえで,それを止めないジャックとレディー・フェイのシーンがお気に入り。
ああいう言わずとも分かり合った関係,みたいなシーンベタだけど弱いのよねえ。
チャゼル監督の映画愛?というか、人は何故時代が変わろうとも映画界に惹かれ、観客は劇場に足を運んで映画を観るのか、に対するチャゼル監督なりの考えを感じる作品でした。
鬼滅の刃 上弦集結,そして刀鍛冶の里へ【感想】★3
僕も当初は原作読んでないしまあいいやと思ってスルーしていたのですが,あまりに流行っていたので日本人の同調圧力に屈して流行っている理由が気になるなぁと思って原作を全巻読破して,観に行きましたよ無限列車編。
あれはめちゃくちゃ面白かったですよ!
最初のオープニングで無限列車が走っていくシーンで,「今のアニメ映画ってこんなことできるんだ!!」ってワクワクして,術式展開のシーンでほえええってなったのが思い出深いです。
そんなアニメーション技術に感動した作品の続編が劇場公開されると言うからこれは観に行くしかないなということで,早速観に行ってきました。
感想(良かった点)
無限城での上弦会議のシーンは最高
刀鍛冶の里編の冒頭,無限城に上弦の月が全員集結するシーン(通称上弦パワハラ会議)のシーンはめちゃくちゃよくて,これは劇場で観た甲斐があったなぁと思いました。
無限城の異空間的な雰囲気とか構造不明な感じとかをうまく表現してて,流石ufotableさんって感じ。
ラスト30分ぐらいでやっと「そうそうこういう劇場映えするシーンが見たかったんよ!」ってなれました。
感想(いまいちだった点)
思ってたんと違った…
僕は2時間の映画を観に行ったのよ,無限列車編的なやつ期待してたのよ。
30分×4本のテレビシリーズをスクリーンで垂れ流されるとは思ってないのよ!
どうりでレイトショーとはいえお客さん少ないと思ったわ!!!
はい,完全にやられました。情報収集不足と言われればそれまでですが,映画行くときってあんまり事前に情報入れないようにしてるので,こういうこともたまにあるんですよね…
遊郭編のクライマックスから刀鍛冶の里編に入るところまでを映画にしたのかと思っていたのだけど,そうではなかったです。
既に放送済みの遊郭編ラスト3話+刀鍛冶の里編1話目を先行公開するっていう映画でした…
遊郭編のアニメは最終決戦を映画に回して終わったんだと勝手に思っていたら違った…
編集して欲しかったなぁ
いやまあ放送するアニメ4本くっつけて公開するのはそれはそれでいいのよ。
ただ編集してくれ!
テレビだと前回のクライマックスのシーンを今回の冒頭にもっかい流すとかよくあるけど,映画で4本セットにした時にそれやらないでほしいのよ!
そのまま通しで見てるんだから前回のおさらいはいらないし,毎回第X話みたいなタイトルいらないしエンディングも1回でいい。
なんやかんやみんな観に来てくれるだろ感がありありと伝わってきてしまう出来なのはいただけなかったです。
まとめ
やっぱり30分アニメ4本くっつけて劇場公開してこれが映画です!大スクリーンで鬼滅の刃見れます!ってのが圧倒的にダメすぎました。無限列車編的なのを期待して観に行こうとしているならちょっと待った!って感じです。
ちょっと編集して1本の作品ぽくしてくれてたら評価だいぶ違ったと思います。
映画らしい見せ方って大事だなぁと改めて感じた一作でした。